モロッコで輪投げ屋までの軌跡(中) 〜フェズの警察署で〜

フェズに到着したのは早朝で、朝日が昇ってきた頃でした。

 

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フェズは狭い道路が続く迷宮都市として有名。

 

僕は前回宿泊していた宿にチェックインして仮眠して、昼過ぎから「カリム探し」の旅へ。
色んな飲食店に行って、カリムの居場所についてヒアリングしていたのですが、
極端に写真を嫌がった彼のきちんとした写真は撮れておらず捜査は難航しました。二時間ほどカリムを探していなかったので、宿の近くで休憩のお茶を一杯、、と思うとそこにはカリムが腰をかけてぷくぷくと紫煙を燻らせていました。

 

喜怒哀楽全ての感情ボルテージが最高潮となり、頭の中で真っ白になりそうになったけど、どうにか耐えて
取り敢えず近くにいた警察に声をかけて、英語の喋れるモロッコ人を呼んできて、状況を警察官に説明しました。

 

モロッコは観光大国。観光客がいなくなれば国としても成り立たなくなることから、観光客を騙した人間は
許されません。警察官と一緒にカリムが居座るカフェの方へ。一歩一歩近くに連れてカリムが大きく見えてくる。
正直、僕はビビりと怒りが高まっていたため、この光景をクリアに思い浮かべれません。やばい展開になることだけは確信していたことは心が覚えてる。

 

カリムは僕が目の前に立つまでは、ご機嫌に煙草をプカプカとしていたのですが、いざ目の前に立つとそりゃあああああ驚いた顔を僕に見せました。言葉が発される前に、警察はカリムを取り押さえた。恐怖と混乱が混じった表情を浮かべながら、僕にカリムが
「WHY?WHY?」と今にも泣き出しそうな面で訴えてくるのを見て、僕は「救えねぇな」と踵を返し、警察と一緒にカリムを連れて警察署へパトカーで向かいました。

 

僕は最初、警察署の待合室にて待機していたのですが、少し時間が経つと別室へ呼ばれ、迎え入れられた場所には
映画で出てきそうな檻にカリムが投獄され、カリムは『降参』という名の美術画から飛び出してきたように見えるくらい、一瞬で衰えて入り、B級映画感を感じさせてくれる仕草で僕の目の前で項垂れていた。両手で錆びた檻に捕まり、正座する投獄者スタイル。

 

 

オーランドブルームを不細工にして40歳老けさせたような老人が僕に流暢な英語で話しかけてくれる。どうやら通訳を担ってくれるそうだ。通訳の老人と話をしてると、カリムが檻の中で電話をし始めた。アラビア語なので僕には何も理解できないが、悲壮感は伝わった。その後、携帯は警察官に没収され、状況を僕から老人に伝えていると、
新たな来客者が物凄いスピードで扉を開き、一目線にカリムの檻へ向かい、全員が膝まづいて涙を流して声をかけている。僕は状況が飲み込めず、自分が旅中であることと日本人であること、当時付き合っていた彼女のこと等全て忘れてしまうくらい目の前の世界をトリップしていた。

 

老人が僕に言う。「They are his family」

 

泣きじゃくっていた初老の女性、カリムに良く似た大きな目と小柄な口を見て、カリムの母親だということは分かった。他に4,5人、小さな子供がいたが、この子達はカリムの息子たちなのか、従兄弟なのか。分からなかったが、全員に囲まれ、両足にしがみつかれる。インドのバラナシでストリートチルドレンにバクシーシをせがまれた時とは質感の違う、強烈な力と感情を両足に感じたものの、アラビア語でどれだけ訴えられても僕は何も理解できない。いや、何も理解できないわけではなかった。息子の罪を心から詫び、許しを乞う母と、事態は飲み込めないが、カリムの救助を懇願する子供たち。

 

両足にしがみつかれたまま身動きの取れない僕に、警察官が通訳の老人と僕の目を見て淡々と何かを話している。
老人は長い髪を手ぐしで整えた後、口を開きました。

 

「明日の朝11時からフェズ裁判所にて簡易裁判を行うので、1時間前には警察署に来るように。そこからタクシーで会場へ向かう。当日は別の通訳者がつくので安心しなさい。最後に。今檻にいる彼の処遇は君の意向で決まる。君が彼に罪を償わせたいのであれば、2年間は牢屋に入って豚の飯を味わうことになるだろう」

 

気づけばフェズの街では日が暮れ、夜が街を飲み込んでいた。
警察署を出て、宿へ帰る道で様々な感情が入り乱れ、僕は何も考えたくなくなっていた。
清潔感のない宿のシングルルームのベッドで僕は携帯の目覚ましを9時にセットし、檻の中にいたカリムと、足元にすがるカリムの母親と子供たちの表情を交差させながら早々と眠りについたのです。

 

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西側 赳史

西側 赳史

持ち味はモロッコの輪投げ屋生活で身につけた度胸と、本場ラテン仕込みのサルサ。株式会社Encounter JapanのCEOです。
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